●『GALAC(ぎゃらく)』最新号のご案内AmazonでGALAC1月号を買う
●『GALAC(ぎゃらく)』最新号のご案内
AmazonでGALAC1月号を買う
この記事の写真をすべて見る

●「予想外」の感覚は誤信から 米メディアの報道尺度が誤謬の主因

 世界が注視した米国の大統領選挙は、ドナルド・トランプ候補(共和党)がヒラリー・クリントン候補(民主党)を破り次期大統領の座を射止めた。この結果について、日米をはじめ各国のメディアは「予想外」「大番狂わせ」と論評し、大多数の人が同じように受け止めたのではないだろうか。私もそんな1人である。

 だが、「暴言王」と酷評されたトランプ候補の当選は、「予想外」の「番狂わせ」と本当に言えるのだろうか。

 答えは明らかだ。クリントン候補の優位を繰り返し強調し「トランプ候補の勝利はない」と示唆するメディアの見立てを通じ、多くの人がそう信じ込まされていただけのことである。それだけに、読者や視聴者の誤信を招いた報道の罪は大きい。メディアの敗北と言っていい。

 なぜ見立てを誤ったのか――問題はそこにある。メディア史に残る汚点だけに、今後さまざまな検証がなされるだろうが、本稿では私なりの考えをまとめてみる。

 大本は米国の有力各紙やTVネットワークなど影響力の強いメディアだった。第4の権力と位置付けられるジャーナリズムの「ベスト・アンド・ブライテスト」(Best and Brightest、最良の、最も聡明な人々の意味)が陥った誤謬の主因は、その目線と報道尺度にあると私は思う。主流を成す有力メディアは、その思想や信条の違いを問わず、大都市部に住む知識人やエリート、富裕者などの支配階層に主眼を据えた報道姿勢を旨とする。その裏返しで、目線の外にいる階層への関心や情報収集は希薄になりがちだ。

次のページ