年金の勘違いの一つに、年金の支え手を年齢で区切る考え方がある。少子高齢化で年金の支え手が少なくなり、「胴上げ型」から「騎⾺戦」、将来的には「肩車型」へと支える側の負担が増えていくといった考え方があり、年金制度が破綻するという疑念を抱くもとになっている。

 しかし、年金は“就業者”が年金の支え手になる。非就業者(15歳以上のみ)に対する就業者の人数を見ると、1980年は1.6人、2010年に1.3人、2040年に1.7人と、先行きも含めほとんど変わらないことから、年金の支え手が大きく減るわけではない。

すぐに実感しにくい点が不信感の⼀因

 厚労省の試算では、若年世代ほど厚生年金の「被保険者期間が20年以上」の割合は増加し、男性は59年度生まれ(24年に65歳)の約80%から、04年度生まれ(24年に20歳)の約90%に上昇、女性は約40%から70%台に上昇する。実質賃金も上昇するので、平均年金額(男女計、実質)は増加し、低年金は減少するといった見通しを立てている。こうした状況から「世代間の損得で考えるのは早計」と、前田さんは言う。

「公的年金は健康保険とは異なり、保険料負担から給付を受けるまでの時間軸が長いので、恩恵をすぐに実感しにくい点が不信感の⼀因になっているように思います。公的年金が保険である以上、長生きや障害などのリスクに遭った時に社会全体で備えるためのものであり、世代間の⾦銭的な損得のみで公的年金を判断するのは適当ではないと考えます」

 この先、万が一病気や怪我で働けなくなった時、要件を満たせば障害年金を受け取ることも可能だ。また、想定以上に長生きすることで老後のために蓄えた資⾦が足りなくなるといったリスクは、年を取ってから対応するのでは遅すぎる。こうした点を踏まえたうえで年⾦制度の将来を考えたい。

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