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 国内で生産されたコメのほとんどを全国農業協同組合連合会(JA全農)が集荷していたのは、もはや過去の話となっている。「令和の米騒動」と呼ばれるコメの価格高騰の裏側では熾烈な集荷競争が展開されてきた。

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「従来の集荷業者や卸売業者だけでなく、これまで扱っていない業者なども含めてコメを集めた結果、どこに在庫があるのかがわからない状況になってしまいました」

 こう説明するのは、農業経済学が専門である宇都宮大学農学部助教の小川真如さんだ。3月31日に農林水産省が発表した内容からも、コメの集荷シェアに大きな変化が起きていることを確認できる。JA全農をはじめとする集荷業者を介さず、生産者(コメ農家)から卸売業者などに直販されたコメが1月末時点で前年同時期と比べて44万トンも拡大したというのだ。これは、コメ農家の出荷量全体の1割に相当する規模だ。

「コメ農家がJA全農に出荷していれば、価格の高騰は穏やかだったと考えられます。JA全農の価格予想の見立てが甘く、大手コメ卸などにスキをつかれた格好になったのでしょう。コメ農家はより高値で買ってくれる業者を選び、直接あるいは間接的に大手コメ卸へと流れてシェアを拡大したようです」(小川さん)

コメ農家の倒産が急増する一方で、異業種が恩恵を!

 言い換えれば、JA全農からシェアを奪うことに成功した大手コメ卸などは、より好条件の買値を提示したということだ。だとすれば、コメ農家も大いに潤ったはずだが、全体を見渡せば必ずしもそうではないらしい。

 東京商工リサーチが蓄積している企業データの中からコメ農家(米作農業)の倒産と事業停止(休廃業・解散)の件数を集計したところ、コロナ禍では小康状態を保っていたものの、2023年に83件まで急増し、2024年には89件に達したという。その数は東京商工リサーチが統計を開始した2013年以降で最多の規模で、今年もすでに倒産が2件発生し、コメ農家の苦境が浮き彫りとなる結果が出ている。

 まさに悲喜こもごもで、コメ高騰の恩恵を受けている異業種も存在するようだ。松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎さんは次のように述べる。

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