往年の定番レンズを復活で低価格に
往年の名レンズとして名高いズマロン28ミリが復刻された。オリジナルのズマロン28ミリは1955年に登場したスクリューマウントレンズで、被写界深度を示す数値が赤色表記だったことから通称「赤ズマロン」と呼ばれていたことも有名だ。ライカ愛好家のバイブル『ライカポケットブック』によると、63年の生産終了まで6228本が生産されたようだ。
今回復刻されたオリジナルと同様に前玉よりも後玉のほうが大きい独自の4群6枚による光学系を踏襲。F5.6という55年当時でも暗めだった開放値もそのままである。ただし、コーティングなどは最新の技術を用いており、「単なるオールドレンズの再現ではない」そうだ。鏡胴のデザインもオリジナルのそれをかなり忠実に再現したもので、赤文字の被写界深度表示もそのままになっている。ただし、無限遠ロックの形状やローレット形状などは現代的に若干アレンジされたものになった。
付属するフードもオリジナル用と同様の形状で、無垢の真鍮から削り出して作られたもの。残念ながら筆者はオリジナルのズマロン28ミリは持っていないが、オリジナルフードだけは所有しているので、比べたところオリジナルは非常に凝ったシワ加工が施されているのに対し、今回の復刻版フードは普通のブラックペイントで、仕上げはやや簡略化されている。とはいえ今の時代に真鍮削り出しで作られたフードはそれだけで価値がある。なお、復刻レンズはフード取り付け部の径が若干大きくなっているようで、オリジナルのフードを取り付けることはできない。
今回の復刻ズマロンがオリジナルともっとも異なるのは、マウントがスクリューではなくライカMマウントになっていることだ。どうせ復刻するのならMマウントではなくスクリューのままならバルナック型でも使えたのにと思う。マウント面には6ビットコードも刻まれており、デジタルのM型ライカに装着すればExif情報にレンズ名が自動的に記されるから、やはりデジタルMで使うことが前提のレンズなのだろう。
ライカでは「他のレンズでは実現できない独特のフィルムライクな表現を楽しめます」としており、最近の解像性能最優先なレンズに対するアンチテーゼ的な意味合いもあるのかもしれない。こうした復刻のシリーズ化には大いに期待したい。
◆河田一規
●焦点距離・F値:28ミリ・F5.6●レンズ構成:4群6枚●画角:75°●最短撮影距離:1メートル●最大撮影倍率:1:33.4●フィルター径:φ34ミリ●大きさ・重さ:φ約51×18ミリ・約165グラム●価格:30万2400円●URL:http://jp.leica-camera.com/