日本は「対米自立」へと舵を切る絶好の機会

 一方、世界は大きく変化している。カナダのカーニー首相が米国と正面から対峙し、欧州諸国も米国はもはや信頼できないと考え、強く自立した欧州を目指す。

 米国との関係を根本から見直す大々的路線転換だ。

 そして、米国との関係を問い直すことは、中国との関係を見直すこととセットになる。EUや欧州諸国の首脳は次々と中国を訪れ、大きな意見の隔たりを前提にしながらも、何とか協力関係を築こうと必死だ。

 日本も、石破政権誕生直後は、対米自立の機運が生じ対中融和ムードが高まったが、今年に入り、トランプ・石破会談のあたりから、急速に慎重姿勢に転じた。トランプに叩かれる石破という絵を予想していたら、意外とうまく首脳会談をこなしたということで石破内閣の支持率が下げ止まったかに見えたことが大きいのかもしれない。

 日本を繋ぎ留めようとする米国の表向き柔らかな対日姿勢もあって、対米追従を続けた方が、国民ウケが良く政権延命に好都合だと判断しているのだろう。

 一方、国民は政府よりも賢明だ。トランプ氏の支離滅裂な言動を見て、世論調査でも対米自立の意見が増えた。本来は、今こそ、対米自立へと舵を切る絶好の機会なのだが、政府にはその勇気がない。

 もう一つ心配なのは、「対米自立」の一人歩きだ。

 米国は信頼できない。米国なしでやっていく覚悟が必要だ。でも米国抜きだと中国が攻めてくる。中国と戦う準備が必要だ。中国は強大な軍事力を持つから、日本もそれに負けない軍備が必要だ。GDP比2%ではとても足りないから、3%、4%が必要だ。そのためには他の支出を削ることも必要だ。国家がなくなれば社会保障も教育もなくなってしまうから。

 こうして、日本が大軍拡に走れば、当然中国もそれに対抗する。それを見た国民の不安は募り、それを利用して、さらに軍拡を進める勢力が強まり、ますます軍拡に突き進む。

 軍拡スパイラルが始まっている。

 その悪循環からどう抜け出すのか。

 米国が信用できないなら、欧州のように中国との関係を安定させてバランスを取るしかない。それにより、歯止めのない軍拡競争から抜け出せる。

 そのためには、まず、日中首脳間で腹を割った話し合いをすることが必須だ。それとともに、両国民の間の交流を深め、相互理解を進めることも重要だ。しかし、岩屋毅外相と王毅外相が両国の間で修学旅行の機会を増やそうと話しただけで、国会で右翼議員から批判の質問が出た。これでは、何もできないではないか。

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