そうした孤立した人は、自ら「SOS」を発することが重要になる。「受援力」と呼び、福祉的な支援を受ける力だ。しかし、現役世代は自らSOSを出す人はあまりいない。助けを求めるのは意外と易しいことではない。斉藤さんは言う。
「なくすべきは、孤独死ではなく生前の社会的な孤立です」
斉藤さんたち研究グループは10年からの7年間、日本の高齢者約4万6千人を追跡調査した。その結果、7年間で自殺者は55人。一人で食事をする「孤食」の状態にある人は、自殺リスクが約2.8倍も高いことが分かった。
「家族やコミュニティーとほとんど接触のない社会的孤立は、その人の健康や生き方に大きな影響を与えます。現役世代も孤独死や孤立死と無縁ではありません」(斉藤さん)
今より心地良い社会に
孤立を減らすためには、みんなでつながれる社会をつくることが重要と言う。
「『ポピュレーション戦略』といいますが、孤独死のリスクが高い人への支援だけでなく、ターゲットを広げることも重要です。人々が出歩きたくなる街をつくれれば、いろいろな人がつながって孤立しにくい地域になることが期待できます。地域全体でSOSを受け入れる力を高めていくことも、孤独死の対策になります」(同)
エンリッチの紺野さんも、「社会が変わらなければ孤独死をめぐる状況は変わらない」と語る。
「私たちNPOの力だけでは限界があります。自治体が旗振り役となって対策を進めていくことが必要です」
エンリッチでは、もしもを誰かに知らせる「安否通知サービス」、地域の単身者同士が互いに見守る「つながりサービス」のいずれも行政向けに「安否通知システム」として提供している。LINEを使ったサービスで、個人情報不要で登録できる。これらを通し、今より心地良い社会になってほしいと思い活動していると紺野さんは言う。