
「コンプレックスの原因は、恐怖だと思います」。俳優の東出昌大さん(37)に「コンプレックス」をテーマに取材をすると、真っ先にその言葉が返ってきました。10代のころからモデルや役者として活躍してきた東出さん。かつては顔に傷がつくことを恐れ、常に「けがをしないように」と意識していたといいます。年を重ねた今は、シミやシワも生きてきた証しであると考え、「ちゃんとしたおじさんになりたい」と思うように。「役者という仕事だけが生きていく術ではない」と考えるようになった背景を聞きました。(全2回の1回目/後編に続く)
――高校生のころに芸能界入りをして、モデルや俳優として活動してきました。20年以上「人から見られる」仕事をしていますが、東出さんにコンプレックスはありますか。
若いときはありました。小学生のときは「眉毛」って呼ばれていたり。でも、それも一過性のもので。人生のなかで命題かのように悩んでいるコンプレックスというのはないように思います。
――コンプレックスを抱えている人たちと自分自身の違いはどこにあると思いますか。
コンプレックスの原因は、恐怖だと思います。何かに不安があって、それが恐怖に変わると自分のなかにコンプレックスが生まれる。人間誰しも不安を抱えているものなので、自然なことなんじゃないでしょうか。
昔は僕も不安でした。「顔に傷がついて役者の仕事がなくなったら、誰が食わせてくれるんだろう」とぐるぐる考え込んだり。その自信がなかったから、蓄えないといけないし、保険にも入らないといけない。いつも頭のどこかに「けがをしないように」という思いがありました。