
役者だけが僕の生きていく術ではない
シミやシワも生きてきた証しだと僕は思うし、ちゃんとしたおじさんになりたいんです(笑)。日常からいい生活をして、僕がいい人かどうかはわからないけど、人と良好な人間関係を結んだ末にできる人相だったら、それでいいかなと。
ただおっしゃるとおり、多くの人が見て「美しい」「美しくない」という指標がある業界でもあります。顔に大きな傷があったら、役に集中できないから呼ばれなくなってしまうこともあるかもしれません。でも、そのときはそのときでと思っています。いつからその考え方にシフトしたのかはわからないけど、役者という仕事だけが僕の生きていく術ではありませんから。
役者のためだけに、生活のやりたいことを全部我慢して、やけどしないために焚き火を我慢したり、けがを避けるために狩猟や川釣りをやめたりするのは、それは僕の人生じゃなくなってしまうと思うんです。

――役者だけでなく、すべての人に共通することかもしれません。不安から抜け出して、そう思えるようになったのはいつ頃でしょうか。
取材を受けるにあたって、「いつからコンプレックスや不安神経症みたいなものがなくなったんだろう」って考えていたんですけど、やっぱり山に移住してきたことは大きいように思います。
今暮らしている場所は、人の数は少ないけれど、一人ひとりとの関わりは厚いんです。食べ物にも溢れています。もし今仕事ができなくなっても、きっとうちの子は誰かに食わせてもらえるという自信があるんです。美談っぽいかもしれないですけど、ここでは母親や父親代わりとして頼れる人間関係が構築されています。
だから今、だいぶ楽なんだと思います。