
ゴールデンウィークがやってきた。でも、円安や物価高騰の影響から、旅行や外出をしないことに決めたという人も少なくないはず。それなら読書で旅するのがおすすめ。旅行気分になる本を「KAIDO books&coffee」に選んでもらった。AERA 2025年5月5日-5月12日合併号より。
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東海道の第一宿である品川にあるKAIDO books&coffeeは今年8月で10周年になるブックカフェ。もともと旅人が行き交う街だったので「旅」をコンセプトに、店名も「街道」からとった。このカフェでお茶を飲んでいると時間旅行をしている気分にもなる。もちろん店主の佐藤亮太さんも旅好きだ。
『考える脚』『エンデュアランス─史上最強のリーダーシャクルトンとその仲間はいかにして生還したか』は共に冒険もの。『考える脚』は日本唯一の「北極冒険家」であり、冒険研究所書店店主でもある荻田泰永さんの著書だ。2014年の北極点無補給単独徒歩の挑戦、16年のカナダ~グリーンランド単独行、17~18年の南極点無補給単独徒歩の3章からなっていて、死と隣り合わせの切迫感が胸に迫る。
『エンデュアランス─史上最強のリーダーシャクルトンとその仲間はいかにして生還したか』は南極で遭難したエンデュアランス号乗組員28人の生還の実話。船が難破してから約1年半、アーネスト・シャクルトンのリーダーシップにより一人の脱落者も出さなかったという奇跡を、ジャーナリストのアルフレッド・ランシングが詳細な取材によってまとめたものだ。
「読んでいると『生きるとは何か』『自分はどう生きたいのか』といった哲学的な問いに向き合わされるんです。荻田さんは、極限の自然の中で常に自分自身と対話しながら生きていて、思考がとても研ぎ澄まされている。『エンデュアランス号』も1年半もの間、命がけで極限の状況に立ち向かっている人たち。自分の悩みなんて大したことない、『生きてるだけでありがたいな』と感じるようになる。悩んでいる人や、日々の生活に疲れている人にとっては、前向きな気持ちになれるきっかけになる本だと思います」
『トランペットを吹き鳴らせ! セルビア&マケドニア ジプシー音楽修行記』『イェレナと学ぶセルビア料理』は一転して、共にセルビアに関する本だ。『トランペットを吹き鳴らせ! セルビア&マケドニア ジプシー音楽修行記』はバルカンブラスに魅せられて、トランペットを携えセルビア・マケドニアへ体当たりの旅に出た吉開裕子さんの著書。ロマ=ジプシー音楽の聖地をめぐる、ブラス音楽漬けの日々を綴った。一貫して音楽を中心としている旅行記というのが新鮮だ。