旅する本屋街々書林(写真:旅する本屋街々書林提供)
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 ゴールデンウィーク到来。せっかくの連休なのにホテル代が高騰し、旅行に行きにくい。それなら読書で旅してはいかが? 旅行気分になるおすすめ本を「旅する本屋・街々書林」に選んでもらった。AERA 2025年5月5日-5月12日合併号より。

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 本棚の書名を見ているだけでも旅気分になる旅の本屋さん「旅する本屋・街々書林」は旅行作家である小柳淳さんが2023年に創業した。リアル書店を開いたのは、未知の世界に出会う場を持っていたいとの願いから。「旅先への興味と敬意」をコンセプトに、旅先のことを知るための本を提供したいと考えている。

『世界中で言葉のかけらを』の著者は、日本語教師として複言語能力の意義を訴え続けてきた。自身も日本語、フランス語、英語、中国語で研究を行っている。この本には日本語を学ぶ生徒たちのエピソードや、世界の各地を旅して体験したことなど、さまざまなものが入っている。

「コミュニケーションとは何か、という問いを、丁寧に、少し屈折した視点で掘り下げています。国際結婚した方の話や、多言語環境の中で子育てする家族の姿を通して、『言葉を通した出会い』について考えさせてくれる。旅をする時の心の置き方やマナーのようなものが見えて、大国主義的な価値観から距離をとる大切さも感じさせてくれます」

芭蕉と時を超える旅

 誰もが知る『おくのほそ道』だが、小柳さんのこの本のオススメポイントは一味違う。

「多賀城跡に多賀城がどのように修復されたかを記す奈良時代に建てられた碑があり、芭蕉が訪れています。私も見に行きました。芭蕉の時代で900年くらい昔のことを思って感動していた、その碑をさらに300年以上後のわれわれも見て追体験することができる。つながりを感じます」

『グッド・フライト、グッド・ナイト』は現役の英国航空パイロットが書いた空にまつわるエッセイ。空を飛ぶことの楽しさ・感動、光や水、夜の美しさなどが詩的でロマンティックな文体で綴られていて、旅行気分になれる。

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