『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』はタイトルだけを見ると単なる路線図なのかと思うが、そこはマップルの昭文社。詳細な日本地図の上に現在使われている路線はもちろん、廃線、未成線までも網羅している。さらにところどころに車窓から見える景色や付近の歴史など、マニアックな情報が詳細に書かれている。パッと開いたページを読むだけで楽しく、旅に出かけたくなる。

『辺境、風の旅人』は日本旅行作家協会の専務理事でもある芦原伸さんのエッセイ。90年代からの30年間の旅の中から、辺境の旅について書き下ろしたものだ。小柳さんは「おわりに」に書かれたエピソードが印象的だったという。貧しい親子から値切った筆者にガイドが「あなた方の国には喜捨の心はないのか」と言う。

「当時、日本のガイドブックには値切り交渉のノウハウがよく書かれていましたが、イスラム圏では『持てる者が持たない者に施す』という価値観が根付いています。この人は『自らの吝嗇(けちなこと)を恥じ入った』と正直に書いている。そういった旅哲学がバックにある本です」

(ライター・濱野奈美子)

■街々書林さんが選ぶ5冊
『世界中で言葉のかけらを』山本冴里(筑摩書房)
『おくのほそ道』松尾芭蕉(岩波文庫)
『グッド・フライト、グッド・ナイト』マーク・ヴァンホーナッカー(早川書房)
『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』(昭文社)
『辺境、風の旅人』芦原伸(産業編集センター)

■旅する本屋 街々書林
東京都武蔵野市吉祥寺本町3-3-9
12:34~18:00 月・火曜定休

AERA 2025年5月5日-5月12日合併号より抜粋

[AERA最新号はこちら]