一部の顧問や保護者が暴走、「闇部活」化することもある(写真はイメージ/撮影・写真映像部・和仁貢介)
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 子どもにとって貴重な体験となる部活動を熱心にサポートする保護者は少なくない。そんな保護者と部活動の強化を願う顧問の教員とが結びつき、学校の管理外で「闇部活」が発生するケースもある。

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顧問が座った途端、生徒がお茶を…

「いま考えても、あの部活の在り方はおかしいと思います」

 神奈川県に暮らすユカリさん(仮名、50代)は、娘の中学校時代の部活動を思い出すと胸がざわつく。娘が所属していた剣道部は県内屈指の強豪だった。部活を見学に訪れたときのことだ。

「そんなこともできんのか!」

 顧問教師の怒号が、2階にある剣道場から1階まで響いてきた。指導が厳しいのは強豪ゆえか。練習後、道場の扉を開けると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。

「顧問の先生がディレクターズチェアみたいな椅子に座ったとたん、マネージャーの女子生徒がぱっと麦茶を出していました。『独裁者』か、と思いました」(ユカリさん)

 だが、それは序の口だった。

子どもを応援する気がないのか

 剣道部の「保護者会」はさまざまな「仕事」を取り仕切っていた。土日の練習試合には、保護者は自分の子どもを試合会場の学校まで車で送迎するというルールもあった。

「私が中学校のころは、駅から歩いて試合に行っていました。娘にも自分で調べて目的地まで行く社会性を身につけてほしいと思いました」(同)

 駅前の学校であれば車の送迎は不要ではないか。ユカリさんは、交通の便のよい場合、電車を使うことを保護者会で提案した。だが、返ってきたのは他の保護者からの非難だった。

「あなたには、子どもを応援しようという気持ちがないのか」

 ユカリさんは、こう語る。

「子どもを越境入学させたとか、両親とも警察官で剣道をやっているとか、そんな親が多かった。親も生活の全てが子どもの部活中心に回っているから、どんな労もいとわないんです」

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親が主催、顧問は有給休暇…「闇部活」化

 違和感は膨らんでいた。ユカリさんは、さらなる大問題に直面する。剣道部は、夏休みに山間部で合宿を行うのが恒例だった。

「けれども、それは『親が主催する合宿』だというんです。顧問の先生は有給休暇を取って、子どもたちを個人的に指導する。だから、これは部活ではないし、事故が起こっても先生の責任ではない、と」

 つまり、夏合宿とはいわゆる「闇部活」だったのだ。

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