崔真淑さん
この記事の写真をすべて見る

トランプ米大統領は4月9日、同日に発動した相互関税の一部を90日間停止すると表明しました。この背景には、米国債の価格の急落が影響していると言われています。というのも、トランプ大統領は関税政策でグローバルに通貨合意を取り付けて、ドル安にしつつも、基軸通貨としてのドルを維持したいとの思惑が見え隠れするからです。米国債の急落は、ドルが投資家から信頼されていないことの裏返しである可能性があり、トランプ大統領は焦ったのではないかというのです。

【写真】トランプ氏の「本当の姿」を知る、元かばん持ちはコチラ

 当初、市場では、米国債を大量売却したのは、外債の含み損を抱えた日本の金融機関ではないかと臆測が流れました(その後、その金融機関は否定)。米通信社ブルームバーグ・ニュースによると、米大手運用会社のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの見解は、米国債急落の真因は、日本や中国の海外勢の投げ売りではなく、短期の投資家などによる損切りに加え、CTA(商品投資顧問)やリスク分散を念頭においた投資家による持ち高調整が重なったとしています。

楽観的に考えすぎるのも怖い

 というのも、日本の金融機関は自己資本比率指標である(CET1)比率が高水準なうえ、米国債は規制上のリスクウェートがゼロのため、金融機関が焦って売る必要はないとしているからです。さらには、中国勢は短期債中心の保有にとどめており、過度な売りは懸念すべきでないというのが、彼らの見解です。とはいえ、金融と政治は切っても切り離せない関係で、中国は米国債を大量に保有しており、安全保障の面で楽観的に考えすぎるのも怖いところです。

 今後の米国債市場の展望ですが、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が一部にあるものの、トランプ政策の影響で米景気の見通しが不透明なことなどから、長期債の利回りを押し上げる「タームプレミアム」(期間に応じてかかってくるリスクに見合う上乗せ分)は高止まりすると、多くの投資家は予想しているようです。徐々に、イールドカーブは緩やかにスティープ化(長短金利差の拡大)する傾向が続くと予想されています。

次のページ 金利変動への備えが重要になる