岩沢さんは、こう話した。
「理屈じゃないっていうか、詳しくはみんな知らないんだけれど、なんか心に響く。年をとっても、何か揺さぶられる。それをとても感じますね」
いま、少子高齢化や人口減少で、伝統芸能に携わる若い担い手が各地で減っている。
横浜国立大学のサークル「みんけん(民謡研究会合唱団)」の副代表、前田龍之介さん(2年)は、今回の舞台に立って改めて、「伝統芸能は継承されることが大切だという思いを強くした」と話す。
「子どもと一緒に」
前田さんの地元、三重県四日市市には、大漁や豊年に感謝しクジラ漁の成功を祈願した「鯨船(くじらぶね)練り行事」という伝統行事がある。毎年10月に行われるこの行事に、前田さんは小学生の時から参加し、クジラの形をしたつくりものの中に入り街中を練り歩いた。こうした伝統芸能が残っているからこそ、先人たちがクジラ漁をしてきたことがわかるという。
「富山など北陸は米どころで、米が生活の基盤になっていて、冷害などの被害を受けないようにと農家の方々が神様に祈りを捧げたことがお祭りとして表れていると思います。それが、後世に残っていくのは、すごくいいことだと感じます」
これからも伝統を引き継ぐプレーヤーとして関わり、次の世代にも伝えていきたいと考えている。大学卒業後に暮らす場所でも、伝統行事があれば積極的に参加したいと話した。
「結婚して子どもが生まれたら、子どもと一緒に楽しみたいです」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年4月21日号より抜粋