──たしかに、小兵力士の活躍には館内が沸きますね。

 翔猿(前頭3/6勝9敗)や宇良(前頭5/7勝8敗)、翠富士(前頭11/9勝6敗)など体の大きさがない力士の健闘ぶりにファンが大きな声援を送るのは、ひじょうにうれしいですね。翠富士の肩透かしなんて絶品ですよ。攻め込んでおいて絶妙のタイミングで横から「いなす」。はたいたり引いたりするのと「いなす」はまったく別物なんです。地味だけど翠富士のような存在は忘れちゃいけません。
 71年見てきて、曙(第64代横綱)や武蔵丸(第67代横綱)に代表される大型力士の活躍で相撲がやや「大味」になってしまい、私はとても残念に思っていました。しかしこのところまた、土俵際で粘る相撲も目につくようになり、四つ相撲の魅力が見直されつつあるような気がします。そこには光明を感じますね。

──五月場所以降も、大相撲は期待できそうですね。当分は大の里と豊昇龍の「2強」でしょうか。

 いや、これからは「大の里時代」が来ると思います。ケガさえなければ、「30年、50年に一人の逸材」として、大相撲の歴史に名をとどめる存在になるでしょう。それに豊昇龍がどれだけ離されずについていけるか。琴桜は2人を追う存在になれるか。大いに注目したいですね。

【プロフィール】
杉山邦博(すぎやま・くにひろ)/1930年生まれ。元NHKアナウンサー、東京相撲記者クラブ会友。日本福祉大学生涯学習センター(愛知県)名誉センター長兼客員教授としても月2回、伝統文化の大切さなどについて講座を持つ

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