
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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先週と相変わらず、動きによっては微妙に痛みを感じる股関節とともに生活しております。悪化はしておらず、微妙ながら確実に改善はしています。これが加齢だ!
先週号の原稿を提出したあと、念のため病院へ行ってみるかなとネットで調べると、あっという間に人工股関節の手術の記事までたどり着いてしまいました。これだからインターネットは困る。
いま自分の身に起こっていることを100パーセント把握してはいないという点において、私が人工股関節になる可能性を完全には否定できません。しかし、常識的に考えてそこまでの話ではないはず。にもかかわらず、心配事のネット検索はまるで川下りのように、悪いほうへ悪いほうへ流れていく。ネットで病気を検索して安心した人の話を聞いたことがありません。
これはインターネットの仕組みのせいではなく、人間のサガのせいと言ったほうが適切かもしれません。良くも悪くも、我々は常に「万が一」を頭の隅に置いているから、こうなるのです。ネットの記事を読むほうも、書くほうも、どちらの頭の中にも「万が一」がある。恐怖を煽る目的がなくとも、信頼できる医療機関が書いた記事でさえ、可能性として完全に否定できないものは、排除しないのが大人の常識的な態度とみなされます。すると、万が一の「イチ」が自分に当てはまると思ってしまう。良いほうの「万が一」は、なかなか自分事としては捉えられないというのに。宝くじとか!