【TYPICAホールディングス】取締役社長 葛西龍也(かさい・たつや)/1976年生まれ、岐阜県出身。99年にフェリシモに入社、新規市場開発などを担当。同社執行役員として子会社代表やJV共同代表なども歴任。一般財団法人PBP COTTONの代表理事としてインドの綿農家支援なども行う(撮影:写真映像部・佐藤創紀)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年4月14日号にはTYPICA ホールディングス 取締役社長 葛西龍也さんが登場した。

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 仕事の合間や食後にコーヒーをたしなむ人は多いだろう。だが、1杯の背景には多くの課題がある。コーヒー豆の価格は先物取引で決まるため、乱高下しやすい。途上国の小規模農家が大半を占める生産者の多くはそのあおりを受け、収入が慢性的に不安定になる。

 温暖化の影響も危惧される。人気の品種、アラビカ種の栽培適地は2050年までに半減するといわれている。収穫時期が一定せず、人手の確保や経済的負担も増えている。

 こうした難題を解決しようと近年注目されているのが、仲介業者を通さず生産者と事業者が直接取引するダイレクトトレードだ。両者がオンライン上でつながれるサービスを提供するスタートアップ企業の新社長に昨年11月、就任した。

 生産者はコーヒー豆の価格を自ら設定し、オンライン市場で出品する。ロースターと呼ばれる事業者は数ある豆のなかから好みに合ったものを選び、約30〜60キロの麻袋単位で注文することができる。

 次年度の収穫分の予約もでき、計画的な生産管理の支援にもつながる。消費者にとってはトレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)が確保されたコーヒーを買える利点がある。

 2019年の創業開始からこれまでに、84カ国・地域にまたがる約16万7千軒の生産者と約6300軒の事業者をつないできた。

「公正な価格での取引を実現することは、持続可能なコーヒーの生産につながります。私たちが世界中の生産者とロースターをつなぐ存在になって世界の標準を変えたい」

 事業を通じて社会課題を解決することが信条で、オーガニックコットンの普及と農家の子どもたちの教育支援を目的とした一般財団法人の代表理事も務める。

「コーヒーや綿花の生産は奴隷貿易や植民地化の名残といった共通の構造問題を抱えています。行き過ぎた資本主義社会のひずみが端的に表れているとも言えます。どちらの事業もこの構造を一緒に変えていこうと言ってくれる人たちに支えられています」

 当面の目標は、2030年までにアラビカ種の33%をダイレクトトレードにすることだ。「個性が個性に直接届けば、生産者ももっといいものを作ろうと頑張る。そんな転換をまずはコーヒーから実現します」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2025年4月14日号

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