
しかしなぜ、財務省が標的になったのか。財務省は、国の財政政策などを担っている中央省庁の一つだ。
「一番は、財務省の影響力が大きくなっていることです」
と話すのは、冒頭の「財務省前デモ」を主催した、塚口洋佑さん(48)だ。
相次ぐ増税や社会保険料の値上げなどで暮らしは厳しくなっているが、最大の要因は「緊縮財政」だという。緊縮財政とは増税と政府支出の抑制により財政赤字を解消することに重きを置く財政政策で、その役割を担っているのが財務省だ。
「財務省の役人が政治家のところに『ご説明』に行き政治に介入したり、IMF(国際通貨基金)の高いポジションに天下りして日本も増税すべきだと言ったりして、財務省の影響が非常に大きくなっています。その財務省が中心となった日本の経済政策の方向性を変えて、貧困問題を解決し、国民生活を向上させたい」
そこで昨年末、他の団体が開催した「財務省解体デモ」に参加し、今年になって自ら主催するようになったという。
塚口さんは、自らつくった政治団体「新生民権党」代表だ。同党は、過剰なコロナ自粛に反対し、憲法9条改正に賛成している。しかし、デモではそうした主張を訴えることはなく、団体名も表に出していない。デモに参加している人は右も左も、イデオロギーも関係なく集まっているという。
塚口さんが掲げるのは、財務省の「解体」ではなく「分割」。分割して、旧態依然とした財務省の体質から抜本的に改革しないといけない、と言う。
「消費税を廃止して、庶民に対する優しい税制が必要です。そして、国民の消費や企業の経済活動を活性化して景気を良くしていくべきです」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年4月14日号より抜粋