
「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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米国でトランプ政権ができてさまざまな変化が起きていますが、その一つが多様性(ダイバーシティ)の否定です。
いわゆるDEI(多様性・公平性・包括性)施策を廃止、連邦政府として認める性別は変更不可能な男性と女性の二つだ、とも。それをうけて世界的企業の中にも、多様性政策の見直しを表明するケースが出てきているようです。
私は社員の前でも、「ローソンはダイバーシティをやめるつもりはない」ということを明言しています。なぜか。ダイバーシティって「普通のこと」だからです。
仮に男性と女性に分けたとしても、男性の中にも女性の中にもそれぞれ、価値観や年齢などが異なるさまざまな人がいる。国が違えば肌の色も違えば言葉も違う。それはただ、「普通のこと」ですよね。
そういう普通のことが、普通に受け入れられて、皆が差別されることなく同じ目線で尊重し合って暮らしていく。それもまた普通のこと、です。

私は学生のときに1年間、米国で暮らしました。いろんな肌の色の、いろんな国の、いろんな言葉、いろんな年齢の人がいて、私はそんな環境で「私たちは地球人なんだ」ということを、疑いようのない事実として感じました。
同じ地球人として、地球上のいろんな文化やいろんな考え方を尊重し合うことさえできれば、そこから新しい価値観や考え方が生まれ、イノベーションにもつながっていく。
政権が変わればまた、DEIを否定する流れも変わる、のかもしれません。
ただ、ダイバーシティの問題は本来、時の政権によって左右されるべきものではありません。より根源的な、普通のこと。それを私たちはいまいちど確認して、前に進めていきたい。ダイバーシティが当然という社会になり、「そんな言葉、もう聞かなくなったね」と言える世界に、早くなればいいなと思います。
※AERA 2025年4月14日号