公立教育を崩壊させるような愚策

 前述のとおり、中学教育の問題もあわせて議論すべきだったし、さらには、実は教育の効果が一番大きいのは幼児教育であるという点を踏まえた、幼児教育の義務教育化などの議論も行うべきだった。

 大学教育における格差問題も非常に深刻だが、これもスルーされた。

 実は、日本は、先進国の中でも教育にかける公的予算の比率が非常に少ない。これまで述べたことを真剣にやろうとしなかったからだ。自民党の責任は重い。

 自民党は、高校無償化の議論の中で、赤字国債の発行をしない範囲にとどめるべきだと考えていたと報じられた。しかし、これは、非常に古い考え方だ。

 教育予算は、コストではなく将来への投資である。ここで使う資金は、その場で消えてしまうのではなく、5年後、10年後には子供達が大人になって活躍を始め、経済や社会に貢献する。結果的に税収も増える。道路や橋と同じで投資的な経費だと考えるべきだ。その財源は、建設国債を考えれば良い。

 もちろん、選挙目当てで富裕層にまで給付して、公立高校教育を崩壊させるというような愚策のための支出は認めるべきではないが、公立高校の教育の質を上げ、低所得層も含めて希望する全ての子供が大学教育に進む機会を提供されるようにすることができれば、無駄な道路をつくるよりはるかに確かなリターンが得られる。

 自民党保守派は、防衛費増大を最優先としているが、石破首相は、これと一線を画し、また野党が仕掛ける安易な教育ばらまき競争を拒否しながら、「教育格差解消と学校教育の質の飛躍的向上を教育予算倍増によって実現する」と国民に約束してはどうか。

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