
親の心子知らずとは言ったものの、子の心親も知らず。上司・部下間のすれ違いを解消する「カギ」はどこにあるのか。AERA 2025年4月7日号より。
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「自分って人間力が低いんだな」
関西在住の男性(50)は管理職になったときに、そう感じたことをはっきりと覚えている。10人いる部下のうち、20代が8人。積極的にコミュニケーションを取ろうと心がけるも、反応は鈍い。そもそも「返事をしない」部下もいた。
「他部署から異動して課長になったこともあり、外様大名のような状況でした。管理職適性がないのではと自問しました」
それでも、めげることなく部下に言葉をかけ続けた。仕事を頼んだあとには必ず、「忙しいのに、ありがとう」。新たな業務を頼むときは、なぜあなたにお願いするのかを説明した。
ある日、部下の一人が男性のもとへやってきて、こう言った。
「課長、僕にできる仕事はいま何かありますか」
それをきっかけに、他の部下も男性に話しかけてくるようになった。
「課長から頼まれた仕事は、なんか『やる気』がわいてくるんですよね」
そう言ってくれる部下まで現れた。チームの空気が、「指示待ち型」から「能動型」へ変化していくのを感じた。
無視をされても男性が「ありがとう」と口にし続けた背景には、若手時代の原体験がある。
「直属の上司はどんな些細な仕事にも『ありがとう』と伝えてくれる人でした。周囲に聞こえるほど大きな声で言われたときは気恥ずかしさも感じましたが、自分でも役に立てるんだと思ったことを覚えています」
だが、誰もがこの男性のように上司と部下との関係性を築けているわけではない。エン・ジャパンが2024年に公表した調査では、7割の人が上司または部下とのコミュニケーションに課題を感じると回答。なかでも上司の4割が「相手との精神的な距離を感じる」と答えた。アエラのアンケートでも、上司と部下の間に隔たりを感じるという声が目立った。
