
ところがどうだろう。イメチェン後の杉田氏は、実に堂々としている。目にしみるほどの鮮やかな青いジャケットに、胸元にブワーッと青い花が散った激しいインナーを合わせてきている。テーマは「威嚇」……でしょうか。しかもこんな色&デザインを着こなせる人はそうそういないのに、杉田氏はちゃんと着こなしているのだ。見た目は大切。少なくとも過去の杉田氏の“小物感”は、今バージョンで消される方向にある。
見た目だけではない。“言っている”ことも、変わった。杉田氏といえば「慰安婦」問題で全国区で名前が知られるようになった議員である。著書にも、「慰安婦」や「歴史戦」という言葉が目立つものも多い。なにしろ以前の公式サイトプロフィールには「(『慰安婦』問題に関して)国際社会に向けて日本の汚名を晴らすため、東奔西走中」とあったのを私は記録している。それが今、公式サイトで「慰安婦」とか「歴史戦」という言葉は、すぐには見つけられない。少なくとも大文字では記されていない。なにしろ今の杉田氏(2025年バージョン)が掲げる政策の最初に来ているのは、「安全保障政策」なのである。え、そういう議員だったっけ? と私は少し驚いた。2番目は「伝統を守る」、それから「経済活性化」「憲法改正」「秩序を守る(移民問題)」とくる。これじゃ、フツーの自民党議員みたいではないか。「歴史戦」はどこにいったの? 「慰安婦」はどこにいったの?
間違いない……と確信する。今回の杉田氏は、「櫻井よしこ先生」に寄せてきている。鎖骨をしっかり見せるちょっとセクシュアルなインナーと、厚手の生地の良質で派手めなジャケットの組み合わせ、そしてアイライン太めのメイクと、空気をとにかく詰め込んだ髪のボリュームで国家の安全保障を語り、日本の伝統をうたい、憲法を改正せよと声をあげ、男たちの右な気分を女王の座からとりまとめるような……そんなまさに櫻井よしこ先生のスタイルそのものをつくりあげてきたのだ。そうすることで「勝てる」と踏んで着々と準備をしてきたのではないか。
しかしそもそも、杉田氏は櫻井よしこ氏になれるのだろうか。
私は櫻井氏の発言・歴史認識も共感しないのだが、やはりあの迫力には圧倒されるものがある。櫻井氏は言葉をたくみに操り、相手がどんな大物でも動じず、インタビューでは声のトーンを使い分け、迫力をもって人を威嚇し導くカリスマ性がある。なにより1945年生まれの女性が、ジャーナリストとして身をたて、その言葉を待たれるような立場につき、80歳近い今にいたるまで第一線で活躍し続けるなど、日本社会ではかなり特異なことだ。