杉田水脈氏の公式サイトから

 2017年3月に出版された雑誌「別冊正論」は、「一冊まるごと櫻井よしこさん。」特集だった。櫻井氏の元気と美の秘訣という軽いネタから、北方領土問題まで幅広く櫻井氏の人となりと、その思想信条が伝わる一冊である。この中に、杉田氏による「私の櫻井よしこ論」という寄稿がある。タイトルは「櫻井さんは私たちを助けるティンカー・ベル」である。タイトルの幼さに衝撃を受けるが、それによると、杉田氏は櫻井氏の写真を家に飾っているくらい櫻井氏に憧れており、実際に会う前から櫻井氏の周りには「ティンカー・ベル」(ピーター・パンに登場する妖精です)が飛んでいるという話を聞いたことがあったという。そしてついに杉田氏が櫻井氏の講演に行ったとき、櫻井氏の周りには「確かに『ティンカー・ベル』が飛んでいました」ということであった。

 服装を変えた、髪形を整えた、HPも刷新した、言うことも変えてきた。より強く、よりぶれない、より闘う、より強いリーダーを目指す、そんなイメージを杉田氏は身にまとい新たに世に出てきた。それは櫻井よしこ氏を目指す道のように傍からは見える。「櫻井よしこ」とは、ある種、女の成功の一形態、ひとつの象徴だからだろう。男以上に国家安全保障を強めに語り、男以上に加害の歴史にきつく目をつむり、男以上に性被害を訴える女を言葉で切りつけ、そのことによって「フツーの女ではない」ポジションに立ち、男たちを鼓舞する愛国ティンカー・ベルになる。もう、よくわからない世界である。日本の伝統がぁ! と言う人たちが「ティンカー・ベル」でよいのかという、そういう問題の立て方をしなくてはいけないところから意味がわからない。それでも、女がこの社会で生き抜くときのひとつのモデルとして、「櫻井よしこ流」というものが模倣されるほどに出来上がっているのだということを、私はイメチェンした杉田氏によって知った。櫻井よしこ氏はこの男尊女卑社会における、トップレベルの女の成功例なのだ。

 それでも模倣は模倣。模倣が原本よりも上回ることは基本的にない。杉田氏は櫻井氏にはなれない。だからこそ、「櫻井よしこ的」な女性の成功例が模倣されることは、この社会を生きる女性たちにとって、どのような意味をもつのか考えずにはいられない。その道を歩むことは女にとっての「本当の成功」と言えるのか。「櫻井よしこ」の”劣化版“は、もしかしたらもっと女を追いつめるのではないか。

 ああ、なぜ「この社会の女の成功」はこんなにも私をざわざわさせるのか。そして“そこ”を目指す女の痛ましさに、なぜはらはらするのだろうか。イメチェンした杉田氏のたてがみのようなボリュームのあるヘアスタイルから、私は今、目が離せない。もちろん、国会で彼女の姿を私は見たくはない。

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼