
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談中にメディアの前で激しい口論となった。ウクライナへの軍事支援が停止される前代未聞の事態となっている。国際ジャーナリスト・大野和基さんはどう見たのか。AERA 2025年3月17日号より。
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2月28日、ホワイトハウスで行われたトランプとゼレンスキーの首脳会談は、40分経過した頃、J・D・バンス副大統領の「平和と繁栄への道は外交に関与することだ」という発言に対して、ゼレンスキーが「我々は2019年に仏独の首脳も交えてロシアと停戦で合意したが、破られた。外交とは一体どういう意味か」と問いただし、激しい口論に変わった。バンスだけではなく、トランプをも挑発したことは明らかだった。
バンスは「あなたの国が破壊されるのを止めることだ。米国メディアの前でそのような訴えをするのは失礼だ」と言い返したが、disaster(大惨事、最悪の結果)という言葉がそのまま当てはまる事態にまで発展したのである。
この“ショー”の見方は真っ二つに分かれた。大国ロシアに侵略されたのはあくまでもウクライナ側なので、多くの人は死に物狂いで国を守ってきたゼレンスキーに同情しただろう。しかし、それは米国からの莫大な援助がなければ、なしえなかったことも事実である。もし援助がなければ、2週間とは言わないまでも、侵攻から1年も経たずに終わっていただろうからだ。
ウクライナ支持の欧州
トランプのエゴの強さが尋常ではないことは今に始まったことではない。またプーチン大統領のエゴの強さもトランプと同レベルか、それ以上に大きい。しかも、どれほどトランプやプーチンのアプローチが西側諸国から見て異常に見えても、それを変えることはできない。その視点からみると、ゼレンスキーはアプローチの仕方を間違えたと言っても過言ではない。国際政治学者のイアン・ブレマーは今回の会談でのゼレンスキーについて「トランプ大統領の巨大なエゴに対処する十分な準備ができていなかった」とコメント。リンゼー・グラム上院議員は「ゼレンスキーは辞任するか、米国との関係を維持する誰かを任命する必要がある」と言い放った。この口論の結果、トランプはウクライナへの援助を停止した。欧州はゼレンスキーを全面的に支持しているが、米国の援助をカバーするには、今の倍の援助をしなければならない。
