ロシアに侵攻されて丸3年。2025年2月24日、ウクライナ・キーウには戦没者の肖像画が並んだ(写真:アフロ)

 停戦交渉ではっきりしていることの一つは誰もがこの戦争を終わらせたいと思っていることだ。二つ目は、プーチンはゼレンスキーと直接交渉することはないということ。そして、米国はウクライナ戦争をさっさと終わらせて、中国やアジア太平洋地域にピボットしたいことである。さらに、ロシアに奪取されたウクライナ領土を取り返すことは非現実的であること。もう一つ付け加えると、トランプはプーチンとの関係を良好にしたいと思っていることだ。

 ゼレンスキーは鉱物資源という「罠」を使って、トランプから安全保障を勝ち取りたいと思っているが、トランプはその罠に引っかからないだろう。ただ、トランプは米企業がウクライナで操業することで、将来のロシア侵略を抑止できるとし、これが事実上ウクライナの安全保障の確約になると主張している。

「凍結された紛争」

 トランプは3月4日に行われた施政方針演説で「平和のためにできるだけ早く交渉の場に戻る用意がある。鉱物資源の協定に署名する用意がある」との書簡を演説前にゼレンスキーから受け取ったことを明らかにしている。意味のある大きな前進である。ゼレンスキーの歩み寄りで、ウクライナへの軍事支援と遮断されている機密情報提供は再開される見込みである。

 バイデン前大統領の外交が失敗であることは誰もが認めるが、トランプの容赦のない取引外交はここでも功奏している。最終的に「真の平和協定」ではなく、朝鮮戦争で起きたような「凍結された紛争」になる可能性も十分あるが、いずれにせよ、停戦ができるだけ早く実現することを望んでやまない。(寄稿)

AERA 2025年3月17日号

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