若手時代はアイドル的な人気を誇り、男性ファンが多かった印象の夏帆。だが、いつしか演技派のイメージにシフトし、性別や年代に関係なく幅広い層から支持される役者となった。“脱アイドル”のきっかけとなった作品について、三杉氏が振り返る。

「13年放送のテレビ東京系ドラマ『みんな!エスパーだよ!』では茶髪で暴力的な不良女子高生に扮し、それまでのイメージを覆しました。また、NEWSの加藤シゲアキさんの小説を原作に行定勲監督がメガホンを取った16年公開の映画『ピンクとグレー』、不自由のない生活を送りながらも禁断の恋に溺れていく人妻役を熱演した20年公開の映画『Red』では、大胆な濡れ場も話題になりましたね」

SNSをやらない信念

 近年、バラエティー番組に出演する機会があまり多くはない夏帆だが、「自分の素顔が見えすぎてしまうと、作品を観てくださるお客さんの邪魔になってしまう気がして」といった理由でこれまでSNSといった発信ツールを持たずに活動してきたため、謎めいたイメージもある。

 しかし、一緒に仕事をした関係者からは、夏帆の人柄について良い評判ばかりが聞こえてくる。前出の三杉氏が言う。

「『Red』で共演した妻夫木聡さんも、夏帆さんについて『弱さを出せる人こそ強い人。包み隠さずに弱いところを見せ、目の前の役から逃げずに向き合える』『ステキだと思いました。覚悟を持った強い方』と話すなど、共演者からも称賛する声が多いですよね。初主演映画『天然コケッコー』で『日本アカデミー賞』の新人俳優賞や『報知映画賞』の新人賞、『ヨコハマ映画祭』の最優秀新人賞などを獲得するなど女優デビュー間もない頃からその才能を高く評価されていた彼女ですが、実力だけでなく、その人間性も高く評価されているようです」

 3月21日には出演映画「BAUS 映画から船出した映画館」の公開を控える夏帆。30代、40代、それ以上と、年齢を重ねるごとに見せる演技にも注目したい。

(小林保子)

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