
「踏み込んではいけない」の判断力
また、悠仁さまの記者会見で山下さんが驚いたのは、悠仁さまの機敏な判断力だった。
通常の会見では、記者がどういうことを聞くか、あらかじめ質問内容が提出されている。しかし、皇室のメンバーが緊張するのは、その質問のやり取りの後にある「関連質問」。どんな質問が飛んでくるかわからないため、その場での対応力が求められるのだ。
悠仁さまの会見では、最初の関連質問が「戦後80年の節目となる今年、戦後生まれの人が大半となり、悠仁さまはその歴史とどう向き合うのか」という内容だった。
あらかじめ想定してあったのか、悠仁さまは幼少の頃から戦争に関する資料館や沖縄、長崎、広島を訪れ、そして先月も舞鶴引揚記念館(京都府)で語り部から話を聞いたことなどを、具体例を挙げて流暢に答えた。
そんなやり取りのなかで山下さんが注目したのは、同じ関連質問のなかで上皇ご夫妻から戦争について聞いた話やエピソードについて尋ねられた際の対応だ。
悠仁さまは、上皇ご夫妻から話を聞く機会はあった、としながらも、
「詳細について、お話は控えさせていただきたいと思います」
と、具体的な内容には踏み込まなかった。

実際の経験を話すことができれば、説得力のある回答になったはずだが、悠仁さまはなぜ控えたのか。山下さんはその背景について、こう分析する。
「上皇、上皇后両陛下から伺ったお話をおふたりの承諾を得ることなしに話すべきではないと判断されたのでしょう。事前に出されていた質問ではありませんので、その場で回答を考えないといけないのですが、非常にいいご判断だったと思います」
振り返れば、秋篠宮家の長女の眞子さんと小室圭さんの婚約内定時代に、小室さんがマスコミに眞子さんとの会話の内容を口にしたことで、騒ぎになったことがあった。
悠仁さまの危機管理能力に優れた瞬時の判断力は、皇族としての長年の振る舞いと教育の蓄積の上にあるものだったのかもしれない。