
1989年の東西ドイツ統一を背景に、時代に翻弄される家族を描いた舞台「グッバイ、レーニン!」が9日に始まる。出演する相葉雅紀さん、浅利陽介さんがそれぞれの考えを語り合った。AERA 2025年3月10日号より。
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相葉さんが舞台に立つ思いを浅利さんに明かしたインタビュー前編はこちら。
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──舞台「グッバイ、レーニン!」は、ベルリンの壁が崩壊した東ドイツで、社会主義から資本主義への変化を知らない、知りたくない母親を懸命に守る物語です。
相葉:僕が演じるアレックスは、お母さんが倒れたのが自分のせいだと思い込んで、だからこそ、お母さんの理想を叶えるために奮闘するんです。心折れるときもあるけど、最後までなんとか頑張ろうっていう。まわりの人が支えてくれて、時には引っ張られて……そういうドラマの物語だと思いますね。
アレックスは、家族のなかで母親を守るという役回りではあるんですけど、自分のなかの正義と、ほかの家族の正義がちょっとずつ、ずれはじめる。母親を守るためについている嘘が、だんだん自分の理想とする社会の思想になっていくっていう、なんか……とても愛くるしいですかね、僕のなかで、アレックスは。
浅利:愛が故にね。家族の物語に、社会主義とか世の中の政治思想とかが混ざっちゃって、ややこしくなっている感じですね。
相葉:アレックスは、正義感が強いと思うんですよね。世の中的な善と悪じゃなくて、自分のなかの善と悪がはっきりとしているから、西の人はもう、浅利くんが演じるデニス以外は受け付けなかったりする。
浅利:ま、西と言っても、デニスはなんか西っぽくないんだけどね(笑)。
相葉:アメリカナイズされてるわけでもないし。ちょっと自分の哲学が強めだよね、デニスはね。
浅利:自分の夢に生きてるよね。強い制作意欲というか。西ドイツとか東ドイツとかどうでもよくて、アレックスを手伝いながら、ただただ自分の撮りたい映画のことを考えてる。逆にアレックスは夢があんまり……
相葉:ないんだよね。まわりの若者が民主化デモに参加するから一緒に行くぜ、ぐらいの感じで、いざ行ってみると、カルチャーショックを受けて打ち砕かれて帰ってきちゃう、みたいな。
浅利:なんか、新しい学校に行って馴染めない子みたい(笑)。
相葉:ほんと、馴染めない子なんだよね。東西ドイツの統一に納得していないというか。シニアチームと同じなんだよね。
浅利:そう。そんなスピード速く行けねえよ、っていう(笑)。
相葉:アレックスのお姉ちゃんみたいにね、馴染める人はすっと馴染めちゃうんだけど、やっぱり馴染めない人は馴染めない。何が正解ってことでもないと思うしね、その人が生きてきた人生の価値観だから。そういうところも面白いですよね。だから、この作品が秘めているメッセージはすごく深いと思う。