「私ですか? 積極的?」
どうやら、自覚はないらしい。
自分探しの途中みたいな感じ?
「うーん、たぶん私が落ち着かないだけだと思うんですよ。集団で1カ所にいるほうが生存率が高いことは重々承知しているんですけど、あえて逆張りで違うところに行きたいというか……」
目標とするゴールはあるのだろうか。
「全然わからない。演劇界とか楽器演奏とか、『これだ!』って思うことは地道に続けているけど、演劇は全てじゃない。あれもやりたい、これもやりたいで、全部を良い環境でやりたいってなると、もっと時間とお金が必要だし……。なんか人生、短いんですよね」
28歳で、早くも人生が短いと感じているようだ。
「自分探しの途中みたいな感じなのかな? 最近は、長崎にすごく惹かれるから、次は長崎県に住み始めるかもしれないし」
彼氏と会うのは3~4カ月に1回
そんな鈴花さんには、東北で暮らす彼氏がいる。鈴花さんも東北出身で、2人は大学の同級生だった。一度は一緒に上京したものの、彼は都会が合わず実家に戻り、現在は農業を継いでいる。遠距離になりながら、交際は8年目になる。
「会うのは3~4カ月に1回ですね。この間は東京集合の東京解散という弾丸デートをしました。5時間くらい一緒にいたのかな」
電話やメールがあるとはいえ、会うのは年に数回だけ。自由に生きる鈴花さんに、彼もまた「地元に戻ってこい」とは言わないらしい。
「彼は、心底優しいと思います。まあ、今度一緒に住むってなったら、向こうのご実家になるだろうし、そうなるとまた変わってきますもんね」
アクティブな鈴花さんが1カ所にとどまって農作業をしている姿は、ちょっと想像がつかなかった。
いつから移動ばかりの生活をしているのだろう。聞けば、鈴花さんは東北で国立大学を卒業しており、意外にもエリートコースを歩んでいた。
「中学受験をして進学校に入って、大学までは真っ当でした。ちゃんと講義を受けて、ゼミとかに参加して、卒論も書いて、アルバイトもしていた。なのに就職活動をしなかったのは、なぜなんだろう? 4年生になって急に半年間だけ、なんか留年したんですよ。その半年間に何かあったんですかね?」
自分でも理由がわからないようだ。