
兵庫県の維新県議が、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に情報提供していた問題で、維新は2月26日に県議2人の処分を発表した。斎藤元彦知事らに対する内部告発を調査する県議会の調査特別委員会(百条委員会)の元副委員長で、真偽不明の文書を立花氏に渡していた岸口実県議は最も重い除名処分となったが、非公開と決まっていた委員会の音声を録音してそのデータなどを立花氏に提供した増山誠県議は離党勧告と、甘さを感じさせる処分となった。
【写真】維新県議から提供を受けた情報をもとに主張を展開していた立花氏
前日までの報道では、増山氏が除名、岸口氏が離党勧告という見方が多かった。
26日に会見した兵庫維新の会幹部は、こう説明した。
「報道と入れ替わって、岸口氏の処分が重くなったのは、公人であるにもかかわらず、他の県議らへの誹謗等が含まれる真偽不明の文書を読んだうえで、立花氏が発信するであろうと知りながら提供したことは社会的な責任が重大であること。2つ目は、副委員長であるのに、百条委員会にかかる真偽不明の情報を流出させたこと。3つ目、当時、県議団の団長で、監督責任があるにもかかわらず、自ら情報を流出したこと。4つ目、知事選で岸口氏は清水貴之候補(元維新参院議員)の選対本部長代理でありながら、他候補の立花氏に情報提供したこと。そういう点を勘案して除名処分となった。岸口氏の処分が重くなったのは、情報漏洩(ろうえい)時の立場によるところが大きい」
一方、事前の報道より軽い処分に終わった増山氏については、こう説明した。
「増山氏は百条委員会の委員の立場で、秘密保持が厳守されなければならない情報を漏洩したことは法令遵守意識がなく、県議団や百条委員会にも無断で行った行為が離党勧告に値すると判断した」
だが、増山県議の行為はもっと重い意味を持つのではないか。
増山県議が情報を漏らした昨年10月25日にあった百条委は、10月31日に告示が迫っていた知事選に影響を与えないよう当面は非公開と決まった。この非公開の百条委では片山安孝元副知事が証言した。片山氏は質問されたことではなく、斎藤氏や片山氏らを内部告発した元県民局長の真偽不明のプライベートの問題を不規則に発言し始めた。委員会で追及する疑惑とは無関係のため、奥谷謙一委員長が制止したが、すぐには話をやめなかった。
それを増山県議が録音し、知事選初日の31日に立花氏に提供。データは立花氏によって拡散されるとともに、「斎藤氏は悪くない」と主張する立花氏の選挙戦にも活用された。斎藤氏が再選された知事選に影響を与えたことは間違いないだろう。維新の処分では、そこまで考慮されていないのではないか。
増山県議は2月19日のYouTubeの番組に出演して、自らが立花氏に情報提供したことを明かし、「立花さんは発信力がある。県民が多くの事実を知ったうえで、選挙に臨むべきだと思った」と正当性を主張している。