※写真はイメージ(gettyimages)
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 社員が学生時代に受けた奨学金を、企業が肩代わりして払う代理返還制度を取り入れる企業が増えている。人材不足を補いたい企業、返済が負担になる若者、双方にとってメリットがある制度に見える。ただ、「時代と逆行してしまうのでは」と警鐘を鳴らす専門家もいる。どういうことだろうか。

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奨学金返済は学生にとっては重すぎる負担

 東京の私立大4年の桑名和明さん(仮名・24歳)は、大学入学後、日本学生支援機構から無利子の貸与奨学金210万円を受けてきた。学費の一部は親に負担してもらったが、残りの分と、長野から上京して一人暮らしでの家賃や生活費などは、アルバイトだけでは到底賄えなかったからだ。

 社会人となる4月からは月に1万3千円、162カ月(約13年半)かけて支払っていく計算だが、在学中の桑名さんは、先々への不安を感じていたという。

「奨学金を返していくのがきつい、という当事者たちの声をよく聞いていましたし、30代まで返還を続けるというのはさすがにしんどいな……と」

 社会人になれば月1万3千円がそこまでの負担とは考えにくい、と思うかもしれないが、大学時代のように家賃が安い寮があるわけではなく、新生活となればそれなりに出費もかさむ。その上、昨今の物価高。最近ニュースになっている「初任給30万円」というのは、銀行などの大手企業の話。桑名さんも大手企業を受けたが、いずれも通らなかった。

 そんな思いを抱きながらの就職活動中、希望業種の建設コンサルティング会社のホームページに書かれた会社の紹介文に目が留まった。

【奨学金、返済します】

 会社の福利厚生で、学生時代に借りた奨学金を全額肩代わりしてくれるという内容だ。大きな魅力を感じたという桑名さんは、その会社を受けて採用され、今年4月から勤務する。

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