では、民間銀行と同様に中央銀行は、無から有を生むように、貨幣を創造できるのか。できる。これについては、日銀総裁自らがそう明言している。

西田昌司委員「銀行は信用創造で、10億でも、100億でもお金を作り出せる。借入れ人が増えれば預金も増える。これが現実。どうですか、日銀総裁」

黒田日銀総裁「銀行が与信行動をすることで預金が生まれることは御指摘の通りです」

(2019年4月4日、参議院決算委員会での答弁)

 黒田総裁としてみれば、できれば言いたくなかったのかもしれないが、事実なのだから仕方がない。

「財源どうする」というツッコミは無意味?

 では、国家は企業と同じようにふるまうべきなのか。その答えもイエスである。著者には『真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学』があり、国家が政府支出をして経済発展を主導すべきだという意見を展開している。また、経済学者マリアナ・マッカートも『企業家としての国家』で同じ見解を示している(本書の帯には「アメリカ政府の公共投資がなければ、GAFAは誕生していない」という文言が)。

 国家の経済を発展させるためには、まず政府が支出をする必要があり、「財源どうする」というツッコミなど無意味だというのが、MMTの紹介者としても知られる著者が強く訴えたいところである。シュンペーターから学んだ経済学者に、リーマンショック後に一躍脚光を浴びるようになったハイマン・ミンスキーがいる。そして、ハイマン・ミンスキーに指導を受けたのが、MMTの主たる提唱者のひとりL・ランダル・レイだ。この流れには、貨幣は負債であるという貨幣観と、まずは支出が先だという経済観が一貫しているのである。

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