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そうしたとき、陛下は訪れた土地で出会った人びととの思い出を、それは楽しそうに語るのだという。
あるとき、外国を訪れた陛下は、歓迎してくれた地元の人たちに応えるため、ビオラで日本の曲を演奏した。そのときの様子を、陛下はユーモアを交えながら、こう振り返った。
「みなさんに喜んでいただこうと思って、誰もが知っている曲を選びました。でも、知っている曲というのは、失敗すればすぐにわかってしまいますから、緊張するものです。そのときばかりは『みなさんが知らない曲にしておけばよかった』と思いましたよ」
そんな陛下の皇太子時代からの息抜きのひとつが、ジョギングだ。
訪問先で、早朝の街をジョギングすることもあったといい、その土地の空気を肌で感じる機会だったのかもしれない。
陛下の走るペースは、かなり速かったようだ。日常的に体を鍛えている皇宮警察の護衛官でも一緒に走るのは容易ではないため、しっかりしたシューズを履いて走るのだという。
走ることについて、陛下はこう話している。
「ランナーズハイというのでしょうか。少し走ると息が切れて、非常に苦しいときがあるのです。しかし、それを我慢して、ゼイゼイ、ハーハーと走っていると、ふと、とても気持ちよくなる瞬間が来るのです。あれは、何なんでしょうねえ。不思議です。でも、だから、やめられないのです」
陛下の知人によると、陛下は昔から「おもしろいですね」「何なんでしょうね」というフレーズをよく会話に交えるという。
「厳格なお顔もあり、公私をはっきりと区別なさっている印象です。それでも常に、相手を畏怖させないよう、ユーモアを交えてやわらかにお話しになる」