もうすぐ3月。小学校入学を控え、「お友達と一緒のクラスになれるかな?」「どんな先生だろう」とドキドキしているお子さん、保護者の方も多いのではないでしょうか。港区は2025年4月から全国で初めて、区内すべての小学校で「プレクラス制度」を導入します。仮のクラスで入学し、その後に本クラスを編制するという仕組みです。この制度のねらいとメリットについて、同区教育委員会事務局学校教育部長の吉野達雄さんにうかがいました。

MENU 「仮のクラス」で児童の状態をしっかり把握する 児童にとってもさまざまなメリットがある 教員の最大の働き方改革は「落ち着いた学校運営」 財政の豊かさとは「無関係」

「仮のクラス」で児童の状態をしっかり把握する

――今年4月から導入される「プレクラス制度」とは?

 プレクラス制度とは、入学式から4月末までは仮の学級(プレクラス)を編制し、5月の連休明けから正式な学級でクラスの運営をスタートするという制度です。この制度を今年の4月から、区内すべての区立小学校(全19校)の1年生に導入します。

――港区で「プレクラス制度」を導入する理由は何でしょうか?

 令和3(2021)年、私は港区立白金小学校で校長をしていた際に、はじめてプレクラス制度を導入しました。

 小学校では保育園や幼稚園などから入学予定の児童の性格などについての情報を得て、この集まった情報に基づき、学級編制を行います。これは長年、日本全国の小学校で行われています。その後、港区では2年生に上がるとき、3年生に上がるときと毎年、クラス替えをします。つまり、1年生になるときだけ、小学校の教員の目で見ることのないまま「机上の情報」で学級編制することになります。

 得た情報をもとに工夫して編制しても、何かしら問題が出てくるのです。その問題を抱えたまま1年間クラスを運営しなければならなくなり、「落ち着いた学級運営ができない」「学級崩壊した」ということは小学校でよくあり、珍しいことではありません。プレクラス制度はそのような状況にならないように、との思いからはじめました。

――どんなメリットがありますか?

 例えば、「机上の情報」で学級編制をする際、児童の様々な特性や発達段階を考慮して、バランスよく分けます。これは、一般的な分け方だと思います。ですが、いざスタートすると、全くちがう特性が見られたり、落ち着きがなくなったりする子が出てきます。そうした時に、経験豊富な力量のある先生が担任だったら良いのですが、経験の浅い若手の先生が担任の場合、1年間、クラス運営に悩むことにもつながります。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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