教員の最大の働き方改革は「落ち着いた学校運営」
――導入した際、教員の反応はいかがでしたか?
「1組はおとなしい子ばかり」「2組は元気な子どもたちが多すぎて……」などいうことがなくなりました。先生たちが「あのまま1年間過ごしたら、〇組は大変だったねー」と安堵したことが、何度もありました。
もちろん、最初は「入学式のクラス写真はどうしましょう」「最初の保護者会はいつにしましょうか」などと、細かい疑問は出てきましたし、出てくるのは当然です。先生の働き方改革が叫ばれる中、事務量も増えます。1年生全員の顔と名前を覚えなければならない。靴箱や机、ロッカーの名前貼りや名簿作成は、仮クラスと本クラス分の2回分あります。ですが、名前貼りなどは、作業日を決めて他学年の先生方も一緒に取り組んだら、あっという間に終わりましたよ。
また、1年生は指示一つとっても混乱してしまいます。少し細かい例ですが、筆箱とノートを机の引き出しから出す場合、「筆箱を出しましょう」「次にノートを出しましょう」という先生と、「筆箱とノートを出してください」という先生がいたら、違う指示に1年生は混乱してしまいます。よって、1年生の学級担任同士で指導の仕方を共有する時間は増えました。
ですが、これらのことは、本クラスで編制後に実現する「落ち着いた学級運営」に比べたら、本当に小さなことです。
――最初の1カ月で、児童のその後の学校生活や学校自体の運営が変わると?
そうです。教員にとっては、最初の1カ月は大変でしょうが、それをはるかに超えるメリットがあります。一つの小学校に荒れている学級が3、4学級あったら先生方は疲弊します。「空いている時間は、あのクラスに入ってください」と、先生たち全員で荒れた学級のフォローに当たらないといけないのです。授業進行の検討や保護者などへの報告など、仕事量も増えます。
先生たちの最大の働き方改革は「落ち着いた学校運営」なのです。最初の1カ月で、1年生のその後の11カ月だけでなく、小学校生活の残りの5年11カ月を落ち着いて過ごせる可能性がとても高くなります。
もちろん、パーフェクトではありません。環境を整えるための施策なので、これをしたから、児童が良い子になるものでも、先生の学級運営の苦労がゼロになるものではありません。先生方、児童、保護者の方々がより良い環境で過ごすための施策です。
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