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1999年に化粧品クチコミサイト「アットコスメ(@cosme)」を立ち上げ、その後2020年に東京・原宿に旗艦店「@cosme TOKYO」をオープンし、2022年には米国Amazonと日本企業では初となる業務資本提携を結んだ株式会社アイスタイル。ITベンチャーとして発展を遂げてきた裏では、何度もつぶれそうになった過去があったといいます。そんな25年にわたる波乱万丈なストーリーを、アイスタイル創業者・代表取締役社長兼CEOの吉松徹郎氏自身が赤裸々にぶっちゃけた一冊が『アットコスメのつぶれない話 困難を乗り越え成長を続けるベンチャー経営の要諦』です。
もともと経営者を目指していたわけではなく、化粧品にも縁のなかった吉松氏が起業したのには、ふたつのきっかけがありました。ひとつは、インターネット黎明期に、のちのアイスタイル共同創業者となる山田メユミ氏が、化粧品情報のメルマガ配信で多くの読者を獲得していたのを見て、化粧品とインターネットの組み合わせに可能性があると直感したこと。
そして同じ頃、こちらものちに戦友と呼ぶべき存在となる宇佐美進典氏とパソコンでドメインチェックをして遊んでいたところ、たまたま「cosme.net」というビッグドメインの空きを発見したこと。これらを契機に、「『cosme.net』というドメインを使って、日本中の化粧品の情報を集約し、そのデータを活用してマーケティングや販売戦略の提案をする」(同書より)という、かつてなかった新たなビジネスモデルを考えたといいます。
渋谷にあるボロボロのビルの一室を借り、当初は仲間らとともに毎日が文化祭の前日のような熱気あふれる日々を過ごしたという吉松氏。しかし組織が成長するにつれ、幾度となく苦難が押し寄せます。ITバブル崩壊による債務超過、社員が増えたことによる新旧メンバーのハレーション、吉松氏と山田氏という創業者同士の衝突、取締役会で否決されたリアル店舗への挑戦、さらにはコロナ禍で陥った倒産寸前のピンチ......。どのエピソードも「ここまであけすけに書く!?」と驚くほど包み隠さず語られており、企業が生き延びることの大変さがひしひしと伝わってきます。
その中で感じるのは、何度大きな決断を迫られても、吉松氏の根本的な思いには当初からブレがないこと。大切にしたいのは、「『@cosme』というサービスを本当の意味でどこまで伸ばせるかということだ。そして生活者中心の市場をつくっていくということ」「生活者による信頼度の高いクチコミ・評価に基づくデータベースという価値を守り続けるということ」(同書より)。そして「サバイバル力を少しずつ身につけていく中で、いつも最後のよりどころになったのはビジョンとミッション」(同書より)だと吉松氏は記します。
起業&経営エピソードトークが詰まった同書。困難を乗り越えてどのように生き延びるかという体験談は、経営者や経営に携わる人々に限らず、多くの読者にとって非常に有益で示唆に富んだ内容であると言えるでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]
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