私は同情はしなかったが、テレビ業界の人の体力に驚いた。登壇した役員一同高齢男性だが、あの人たちはフツーのおじいさんじゃない。「24時間戦えますか」の昭和を駆け抜け、激しい人事戦争を勝ち抜き、男組織で生き抜いた高齢男性の体力は私よりも多分ある。無理だよフツーに10時間なんて。

 記者会見後に、実感する。今の日本で吹き荒れる#MeTooが明らかにしたのは、女を排除し、女を利用し、男で連帯し、男が競い合うことで発展してきた組織が結局何につまずくのか、ということだ。男たちは、最終的に自らの足に絡まってつまずいた。今までと同じ歩き方をしていたのに、女を前に、激しく転倒した。もしかしたら、男の人たちとは、そのことをいやというほど知っているからこそ、女を警戒し排除するのかもしれないと思うほどに、今回、男たちが激しく転ぶのを目撃した思いである。

 日本が#MeTooで揺れている。そして男たちは男たちの性欲で転がり続けている。

 いったい、性欲とは何なのだ。

 なぜ、あれほど地位も名誉も人気もあった人が、そんなことでつまずくのだろう。

 なぜ、あれほどの大組織が、こんなことで転ぶのだろう。

「性欲と性加害を結びつけるべきではない」とは、良識的なフェミニストが言ってきたことだ。性加害とは、性欲ではなく、支配欲によるものなのであると。では、なぜ「支配欲」は「性」と結びつくのか。ある種の男たちが女という性に、自分の男根と人生をかけて暴力を振るう、侮辱する、攻撃するのはなぜなのか。なぜ、性は、これほどまでに利用されるのか。

 専門家によれば、性欲は定義されていないのだそうだ。私も性について関わり続けているが、性欲は心理学の専門分野であるが、性欲研究はほとんどされていないことを知ったのはつい最近のことである。

 3000人以上の性犯罪加害者と関わり、性依存問題に向き合い続けている精神保健福祉士の斉藤章佳氏による『セックス依存症』(幻冬舎新書)には、AV男優の森林原人氏との対談が収められている。

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