「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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今回は私たちの生活に欠かせない「図書館」についてお話ししたいと思います。町の本屋さんが減少傾向にある一方で、全国の公共図書館は直近30年で1・5倍増え、3300館ほどあるそうです。
私も小学生の頃から図書館が大好き。高台にある見晴らしのいい図書館に自転車でよく出かけていました。4人きょうだいの6人家族で家は賑やかなのですが、「誰にも邪魔されることのない」図書館もとても魅力的でした。エジソンやベートーベンなど、海外の偉人の伝記をよく読んでいた記憶があります。
高校生になると大学受験の勉強を図書館で。大学時代は「館下食堂」と呼んでいた学食が図書館の下にあり、そこでご飯を食べて、そのまま上に上がって図書館で過ごして、を繰り返していました。
私の人生にとって図書館とは。共通するのは「居心地のいい空間だった」ということです。大学の図書館には専門的で難しい本もたくさん置いてありましたが、それらを広げて読みふけって、という感じではあまりなかったですね(笑)。それでも、多くの時間をそこで過ごしたなあという思い出だけはあるんです。
本棚と本棚の間を一人でゆっくりと歩いていると、アカデミックな空気に触れることができる気がして、それだけですでに魅力的な場所でした。それから独特な本の匂いも。本屋さんでの新しい本の匂いも好きですが、図書館の中の年季の入った本の匂いにも惹かれました。図書館に行くと心が落ち着く、大きな理由の一つだった気がします。
何かに悩んだときや、つらい気持ちのときには、学校や近くの図書館にふらりと入ってみる。本を読まずとも、それに囲まれるだけで、ほっとした気持ちになる。図書館という存在にはそんな意味もあると思います。その数が全国で増えていると知り、とてもうれしい気持ちになりました。
※AERA 2025年2月10日号