秋篠宮妃の紀子さまは、昨年12月に訪問したトルコの自然や人びとの暮らしを思いながら、現地の伝統的な手芸である「オヤ」を編んだことを詠み込んだ。
絲と針夢中にオヤを編む先に二つ三つと野の花が咲く
「オヤ」を編むのに集中している紀子さまの手元で、花の意匠が次々と咲いていく情景が目に浮かぶ和歌だ。
永田さんは、普通であれば「一つ二つ」としがちな場面で、「二つ三つ」という表現を選ばれたのが印象的だと話す。
「紀子さまは、誠実に和歌に向き合われる方。歌を作ることにも積極的で素材選びも幅広く、旅先で得たオヤの技術を詠み込まれたところが、この一首の良さになっているのでしょう」
雅子さまも大笑いの理由
今年の題となった「夢」のテーマに対し、一筋縄では行かずに「難しい……」と苦戦された皇族方も少なくなかったという。
歌会始のあと、宮殿の別室で両陛下が選者らと懇談する場が設けられる。
永田さんは、一般から公募で集まった和歌のなかで、最も多かった「夢」は何だと思われますかと、陛下と雅子さまにたずねたという。
すこし考えるおふたりに、永田さんが「入選して皇居に来るのが夢、という内容でした」と話すと、雅子さまは明るい表情で大笑いし、隣の陛下もにっこり。
そのあたたかな光景に、周りからも笑い声が上がったという。
(AERA dot.編集部・永井貴子)