久子さまと猫とマウス
長女の承子さまは、母の久子さまとの絆を感じさせる和歌だった。
『夢の国のちびっこバク』も三十年(みそとせ)をわが夢食(は)みつつおとなになりしか
承子さまは、「夢」というお題に、母の久子さまが執筆した絵本『夢の国のちびっこバク』を思い出し、むかし自分の怖い夢を食べてくれた主人公のバックンも大人になっただろうな、と思いを寄せた。
「今回の和歌も表現が瑞々しくこちらもハッとするような、いい和歌をお詠みになる」
永田さんは、そう振り返りつつも苦笑する。
「ぜひもっとたくさん作ってください、といつもお伝えしているのですよ」
母の久子さまは多忙にもかかわらず、メールの返事が驚くほど速いそうで、「いつお休みになっておられるのか」と永田さんは首をかしげる。
永田さんとは、こんなユニークなやり取りもある。
永田さんは、自宅で2匹の仔猫を飼っている。
あるとき、久子さまと和歌などについてメールでやり取りをしていると、遊んでほしい仔猫たちがパソコンのキーボードの上に乗ったり、パソコン画面の前に居座ったりし始めてしまった。
困った永田さんが久子さまに「パソコンで仕事をしていると仔猫がジャマをして困る」とメールをすると、即座に返信メールが届いた。
「マウス(鼠)がいるからですよ」
思わず笑いがこぼれたと、永田さんは振り返る。
「頭の回転の速い方でいつも感心します」
紀子さま「二つ三つ」と花が咲く
今回の歌会始で、秋篠宮家の次女の佳子さまは、時間を忘れるほど絵を描くのに熱中していた幼い頃の思い出を振り返る歌を詠んだ。
キャンバスに夢中になりて描きゐしかの日のことはなほあざやかに