力学をひもとく手段
映画には彼を支持するアメリカ市民の姿も描かれる。監督は「本作でアメリカを自分なりに理解したかった」とも明かす。
「例えばトランプの父・フレッドは民主党支持者でトランプ自身もヒラリーを応援していた時期がある。アメリカの政党政治の裏には民主党vs.共和党の図式以前に何かしらの力が働いている。本作はその力学をひもとく手段になるかもと思ったのです」
映画からなにが見えたかは観客に委ねるが、と監督は続ける。
「僕らのような外の人間はよくアメリカを『金持ちのための国で弱者は虐げられる』と言う。それはあまりに短絡的では?と思っていたのですが、本作を通して『いや、案外それが真実かも』という思いに至りました。結局アメリカは寡頭(かとう)政治で致し方なく民主主義をやっている国、といまは解釈しています」
トランプ氏や支持者の反応については、
「不安や怖さはありません。前作『聖地には~』でもイランの議員からいろいろ攻撃されましたしね。本作がまさに世界を変化させようとしている人物がどんな人間なのかを知る選択肢になればおもしろいと思っています」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2025年1月27日号