看護医療学部に入って3年後の27歳、思い悩んだMIOさんは「人生を終わらせよう」と考えて、インドに行くことにした。
「ネットで『死にたい』と調べたら、『とりあえずインドに行け』と書いてあったんです。“自分探し”というより“自分を終わらせる”つもりでした。身辺整理もして、バックパックを背負って旅立ちました」
インドでは、身寄りがない高齢者や、貧しくて病院に行くことができない患者が暮らすホスピス「マザーテレサハウス」で過ごしていた。
「そこで彼らがとても澄んだ目をして、喜んで亡くなっていくことに衝撃を受けたんです。しかも、自分が最期をみとった人に『ここでご飯をもらえて、あなたの腕の中にいられてうれしい』と言われて……。『あとは帰って、少しでも人の役に立つだけだ』と思えるようになりました。この旅を通じて、少しだけ感情移入の度合いを調整できるようになったんです」
人間はいつか必ず死ぬ。しかし、それは悲しいこととは限らない。当人の生き方、考え方で大きく変わるもの……日本から遠く離れた異国の地で、多くの死に触れるなかで、少しずつだが自他の境界が形成されていったようだ。