ソフトバンクへの入団会見をした上沢(2024年12月)

NPBは「有原式FA」を禁止するルール作りを

 さらに「有原式FA」が注目されたのは、上沢直之のケースだ。上沢も同様にFA権を取得していない状況で昨年オフに日本ハムからポスティングシステムで米国に渡ったが、1年足らずで日本球界への復帰を決断。古巣の日本ハムでなく、ソフトバンクに入団したことで波紋を呼んだ。

 在京球団の編成担当が語気を強める。

「NPBは『有原式FA』を禁止するルール作りに着手するべきです。FA権を所有せず、米国でプレーした期間が3年未満の選手は、元の国内球団に保有権、もしくは獲得交渉の優先権があるとしたほうがいい。選手が他球団に行きたいと復帰を拒否した場合はFAの時と同様に人的、金銭補償が発生する。これぐらいの縛りを設けないと、ポスティングシステムで選手を送り出した球団は割に合わない。戦力均衡の観点でも不公平です」

 現行のルールでは有原、上沢に落ち度があるわけではない。限られた選手寿命を考えると、金銭面を含めて好条件の球団でプレーする決断が間違っているとは言えない。ただ、選手の中にも様々な声がある。かつて日米でプレーした球界OBは複雑な思いを口にする。

「90年代、00年代にメジャーに挑戦する選手たちは、日本に戻ってくることを考えていなかったと思います。マイナー契約でもいいから歯を食いしばってメジャーを目指す覚悟だった。結果として日本に戻ってきた選手が多いですが、野球人生をまっとうする覚悟で海の向こうに渡っている。有原や上沢にはそれぞれ事情があったかもしれないが、わずか1、2年で米国での挑戦をあきらめるなら本当に憧れていた場所だったのかなと。ポスティングシステムを認めた日本ハム側もこんなに早く日本球界に復帰することを想定していなかったんじゃないですかね。しかも、同一リーグのソフトバンクに移籍となれば何の得もない。有原や上沢の決断をどうこういうつもりはないですが、選手目線で見ても日本ハムは気の毒だなと感じます。ポスティングシステムの制度を見直す時期が来ているんじゃないでしょうか」

勢力均衡の流れに逆行する現行ルール

 ドラフト制度などによってNPBは勢力均衡を目指してきた。だが、現行ルールのままだと、豊富な資金力を持つ球団が「有原式FA」で米国から復帰した即戦力の選手たちを獲得できるため、その流れに逆行する。

 ポスティングシステムは球団側の許可がなければ実現しない。ポスティングによってメジャー挑戦を希望する選手が増えるなか、選手の夢を後押しした球団が不利益を被る制度は、早期に改善する必要があるのではないだろうか。

(今川秀悟)

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