物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。
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2024年の漢字は、「金」だそうだが、個人的には別の漢字が思い浮かんでいた。
「責」だ。自己責任。責める。責められる。
僕自身、経済の情報に多く触れているので偏りもあると思うが、新NISAが始まり、世界経済や投資に興味を持つ人が増えたように感じている。それと同時に膨らんでいるのは将来への不安だ。24年後半になって、女性誌の企画に呼ばれることが多くなったが、その多くが将来への不安に関する対談や座談会、悩み相談だった。新NISAによって老後に向けたお金を運用しやすくなったのはいいことだが、みなさんでリスクをとって自己責任で運用してくださいと言われているようなものだ。あるいは、年金だけでは足りないから自己責任で準備してくださいというメッセージかもしれない。
周りの人が投資を始めた、投資で儲けているという話を聞くと、自分もお金や投資の勉強をしないといけないのでは、と自分を責めてしまうという声も聞いた。
24年12月に発表された流行語大賞の年間大賞には、「ふてほど」が選ばれた。これは「不適切にもほどがある!」というドラマのタイトルの略称だ。このドラマは過度なコンプラ社会に責められて疲れている僕たちの気持ちを代弁してくれた。
また、個人的に興味深かったのは、流行語大賞のトップ10に入った「もうええでしょう」だ。ドラマのセリフが年間大賞をとったのは、ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」(2013年)が最後だが、それとは対照的なセリフだ。
「半沢直樹」のように、これまでの日本で人気だったのは、弱き者が協力して悪い強敵を倒す物語。一方、「もうええでしょう」というセリフが登場するドラマ「地面師たち」は、真逆で、悪者が真面目に生きている人たちを騙すストーリー。