
【ケース3】
適用金利が5年ごとに0.5%ずつ上がる場合
総返済額:5029万739円
シミュレーションを見ると、金利が上昇しても元金が減っていくぶん、毎月の返済額にはそこまで大きな影響はないことがわかる。5年ルールや125%ルールによって未払い利息が発生するには、相当な金利上昇が条件であることもわかるだろう。
ただし、総返済額を比較すると、金利上昇の有無により、数百万円の差は生じている。
金利上昇局面で気を付けるべきことは
金利上昇に備え、住宅ローンの繰り上げ返済を検討する人もいるかもしれない。
だが、早坂氏は「繰り上げ返済の選択は慎重にすべきだ」と言う。住宅ローン控除は借り入れから最大13年間、残高の0.7%が所得控除となる。繰り上げ返済をすると、ローン残債が減るため、住宅ローン控除の恩恵も少なくなってしまうのだ。
早坂氏は、「金利上昇よりも物価上昇が家計に与える影響が大きい」と指摘する。
生活費に直結する食料品や日用品だけでなく、家電や火災保険料までもが値上がりしている。さらに、住宅取得後にかかる費用はローンの返済額だけではない。持ち家には定期的なメンテナンスも必要で、戸建てなら10年ごとに屋根や外壁のメンテナンス費用が発生する。この費用は最低でも100万円ほどかかる想定だが、物価上昇が進めばさらにかさむことが考えられる。くわえて、年齢を重ねれば、子どもの教育費や親の介護費用、自身の医療費など、予測できない支出も増えてくる。
今後の金利がどうなるかは誰にもわからない。だからこそ、住宅ローンを借りる際は、これらの予測できない未来の経済リスクも考慮したうえで、無理のない借入額に抑えることが大切だ。早坂氏は、住宅の予算は年収の6倍から8倍の範囲、かつ借入金額は年間返済負担率が25%になるのが理想だという。また、予算には初期費用や引っ越し費用、住宅購入後の固定資産税や維持費も込みで考えておきたい。
詳細な返済シミュレーションを希望する場合は、金融機関やファイナンシャルプランナーに相談し、キャッシュフロー表を作成するのもおすすめだ。
(ライター・森瀧早織)