セルフ受肉VTuber:ファム・ファタルさん/自身でモデルを制作して活動するセルフ受肉VTuber。YouTubeを中心に歌など幅広く活動。X(@femme_fatale777)、YouTubeチャンネル「ファム・ファタル - (f)EMME FATALE」(イラスト:ファム・ファタルさん提供)

 記者の配信はどうだっただろうか。客観的に評価してもらいたいと、主にYouTubeで活動し、JOYミュージックスクールではVTuber講師も務める「ファム・ファタル」さんに、恐れ多くも記者の生配信の添削をお願いしてみた。YouTubeのチャンネル登録者数は10万人を超える人気VTuberだ。

「話すことを事前に決めていたのは二重丸だったと思います。加えて、配信をスタートしてからコメントがなくても、よどみなくお話ができていました。相手がいないのに話し続けるのは本当に難しく、記者さんは才能あるかも。講義では、『10秒以上間を空けないでください』とよく話していますが、実際には10秒以上止まってしまうことが多いんです。必要以上に間ができてしまうのはVTuberとしては面白くないと判断されてしまいます」

 これは才能ありか。ゆくゆくは人気VTuberに……と夢を見かけたが、そう甘くはない。

「ただ、いわゆる記者さんという感じの話し方で、抑揚がない点が気になりました。リスナーの方が入ってきたときに、『この人、一人なのにこんなに楽しそうに話してる!』という感想を持たせられるかが大事です」

 これは慣れで改善できるという。ファム・ファタルさん自身、2021年にVTuberデビューして以降、リスナーとの交流を重ねることで加速度的に話し方に抑揚がつくようになったという。画面上だけではなく、リアルの生活でも変化があった。

なりたい自分になる

「私は高校生のころにうつ病を患っていました。引っ込み思案で落ち込みやすかったのですが、VTuberを続けていくうちに変化があったように思います。『ファム・ファタル』という、気が強く、リーダーシップのある女性として立ち続けることで、自分の性格もそちらに寄っていったんです」

 実際に取材でファム・ファタルさんと話しても、そのような過去はみじんも感じさせない快活さがあった。アバターの女性がそこにいるような感覚だ。

「VTuberは『なりたい自分』を実現するためのツールとして、現実世界に影響を与え得るものだと思っています。私は魅力的な女性なんだ、これくらいできて当然よ、という態度で過ごしてきたら本当にそう思うようになる。自己暗示がかかるんです」(ファム・ファタルさん)

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