TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、この春放送した二つの追悼番組について。
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春の雨を眺めながらコラムを書いていて、窓から外を眺めると、桜の花が揺れている。別れと出会いの季節の3月、二つの追悼番組を放送、詩人・ラジオパーソナリティだった清水哲男さんとミュージシャンの高橋幸宏さんを偲(しの)んだ。
前者は「清水哲男を偲んで~父の名は詩人」(3月25日放送)
次女清水あかねさんがいまだ知らなかった父の実像を探して残された父の詩集を詠み、幼き自分を井の頭自然文化園で父が映してくれた8ミリを再生したり、カセットテープで父のラジオ番組を聴く。京大で同級生だった鳥越俊太郎さんの話に耳を傾け、同じ詩人のねじめ正一さんなど、父ゆかりの人を訪ねて過ごしたあかねさんのTwitterを軸に、詩人の生涯を追った。
3月の最終日に放送した後者が「サラヴァ、高橋幸宏~感謝を込めて音楽を」(3月31日放送)
大貫妙子さん、南佳孝さん、矢野顕子さん、サエキけんぞうさん、高野寛さんといった音楽仲間やフォトジャーナリストのトシ矢嶋さんが生前の幸宏さんの姿に触れながら音楽を一曲ずつ手向け、最後に兄・高橋信之さんが登場して弟への思いを吐露した。
進行は坂本美雨さん。イエロー・マジック・オーケストラ時代、一緒だった坂本龍一さん、矢野顕子さんの娘でもある彼女が「幸宏さん、教授とアッコちゃん(矢野さん)の子として見守ってくれてありがとう。恥ずかしくないように生きていきます」と涙をこらえ、番組を締めくくった。
両番組にもかつてのラジオ番組に残した故人の声を入れた。
声って不思議だ。亡くなられたのに本人が耳元で語りかけてくれる。すぐそこにいる感じがする。その気持ちは写真や動画では味わえない。
故人への思いを音だけで表現し、リスナーに届ける番組では心を強く持って制作に臨む。