通塾時間を削った“省エネ受験”で臨んだ家庭もある。
都内の人事コンサルタント会社で働く40代の女性の娘は、集団スポーツのチームに所属。チームはオリンピック選手が輩出する名門で、中学生になれば、遠征なども増えてくるが、通っている国立の小・中学校では遠征のための欠席もただの欠席になると聞き、スポーツ活動を応援してくれる私立中学を考えるようになった。
共働き家庭参戦で変化
だが女性は仕事が忙しく、スポーツ活動の伴走だけで手一杯の状況。実家の両親も体調を崩したこともあり、これ以上、自分のタスクを増やすのは無理があると感じていた。そこで考えたのがオンライン塾だ。通塾のための送迎も必要ない上、習い事との両立もできる。面接でスポーツを頑張っていることをアピールできる学校を志望校に据え、前出の家庭同様に短期決戦で合格を手にした。
こうした負担の少ない方法で参戦する家庭の増加は、中学受験全体の雰囲気を変えつつある。『〈中学受験〉親子で勝ちとる最高の合格』の著者の中曽根陽子さんは「偏差値上位校だけに人気が集まるという時代ではなくなり、裾野が広がりました」と話す。首都圏模試センターが発表した来年度入試に向けての志望者数増加率を見ると、5位までに並ぶ学校はいずれも中堅またはそれ以下の学校だ。
中曽根さんは、中受で気をつけてほしいこととして、①子どもの心身の健康②学校選び③スケジュール・タスク管理の三つを挙げる。
③が難しい場合は冒頭の家庭のように個別指導に頼る方法もあるが、①と②は親でなければできないことだ。「いずれにしても、何を目的に中学受験をするのか、家庭で軸をしっかりと話し合ってスタートしてください」(中曽根さん)
幸せな受験体験で終わるために、親の役目はやはり大きい。
(フリーランス記者・宮本さおり)
※AERA 2024年12月9日号より抜粋