本格的な夏に入り、どこか涼しいところに行きたいなと考えている人がたくさんいることでしょう。
盆地である京都では、その暑さはかなりのものですが、古き時代から試行錯誤をこらして涼を求めていました。
そんな京都の夏の風物詩といえば「川床」です。
実はこの川床、地域によって「川床」「納涼床」と呼び名が変わります。
京都の中心地に近い鴨川では「納涼床」、京の奥座敷と呼ばれる貴船では「川床」と呼ばれています。
今回は川床の歴史を振り返りながら、水の神が棲む貴船の魅力に迫ります。

「天然のクーラー」といわれる貴船の川床
「天然のクーラー」といわれる貴船の川床

納涼床のきっかけは豊臣秀吉

納涼床の歴史のスタートは、豊臣秀吉の時代にまでさかのぼります。
戦乱が落ち着くと、秀吉は鴨川にかかる三条橋、五条橋の架け替えに着手。
架け替えの時期には、鴨川沿いで見世物や茶屋ができ、納涼床の始まりとなったのです。
江戸時代には、約400軒もの茶屋ができ、大きな賑わいを見せるようになりました。
昭和に入ると、台風の影響で壊滅的な打撃を受けたり、第二次世界大戦の影響で納涼床が消えた時代もありました。
しかし、昭和27(1952)年には「納涼床許可基準」が策定され、再び数軒の店舗が納涼床をスタートさせました。
今では夏の京都の風物詩として、鴨川納涼床は欠かせない存在となっています。

夜の景観も美しい鴨川の納涼床
夜の景観も美しい鴨川の納涼床

京の奥座敷・貴船の川床

今、京都の中心地である鴨川の納涼床に劣らず、人気を見せているのが貴船の川床。
江戸時代にはすでに大きな賑わいを見せていた鴨川の納涼床に比べて、貴船の川床の歴史は意外と新しく大正時代にスタートしたといわれています。
最初は茶屋が川に川机を置いたのが始まりで、まだ川に足をつけて涼を感じるだけのものでした。
昭和5(1930)年に叡山電鉄が鞍馬まで開通したのをきっかけに、貴船にも今のような川床が増えていったのです。
貴船の川床の魅力といったら、何といってもその自然豊かな景観でしょう。
貴船川を囲むように生い茂る木々のおかげで、川床付近の気温は市内中心部と比べてマイナス10度も違うといわれています。
川のすぐ真上に川床をつくっているところが多く「天然のクーラー」とも呼ばれるほど、夏とは思えない涼しさを感じることができます。

水の神が棲む場所、貴船神社

貴船の川床で料理を楽しむとともに、もうひとつ訪れたい場所があります。
水の神が棲む「貴船神社」です。
創建時期は不明ですが、ある文献によると約1300年前にはすでにあったとされる由緒正しい神社です。
本宮にはタカオカミノカミという水を司る神が祀られていて、雨を降らせたり、雨を止ませたりする龍神といわれています。
かつては、晴天を願う場合は「白馬」を奉納し、雨を願う場合は「黒馬」を奉納されていたとされ、現在の絵馬の発祥でもあるのだとか。
最近では、若い女性にも人気の貴船神社。
実は、水の神様とあわせて、縁結びの神様としても話題を集めているのです。
そこで人気なのが「水占い」。これは、真っ白な紙を御神水と呼ばれる池に浮かべると、文字が浮かび上がってくるというもの。
水の神様のおかげでよく当たるともいわれ、全国各地から若い女性が訪れるようになったのです。
気になる方は、ぜひこちらも試してみては。
── 京都の中心地から電車で約1時間半でたどり着く奥座敷・貴船。
京都らしい賑わいを見せる鴨川とは対照的な、落ち着いた涼しさを感じられる貴船の川床。
夏の京都を訪れる際は、どちらも味わってみたいものですね。

水の神様が祀られる貴船神社
水の神様が祀られる貴船神社