なぜ、そうなったのか? まさに高齢化が影響していると、「The Economist」は指摘しています。2022年には、先進国では85歳以上の人が3300万人となり総人口の2.4%。1970年頃の500万人(総人口の0.5%)から大幅に増加しています。しかも、各国共通なのは、政府は退職年齢を引き上げなかったことです。先進国では現在、平均退職年齢は64歳。高齢化による給付増は続きそうな予感です。

 しかし、給付金の拡大は、特定の受給者に恩恵をもたらす一方で、受け取れない人々との間に格差を生み出しかねません。これにより、税負担を感じる納税者の間で「給付金よりも減税を求める声」が先進国で強まっていると推測されます。特に、給付金が公平に配分されていないと感じる層からの不満が高まり、経済保守派(減税などの小さな政府志向)の支持が増加していると考えられます。

新しい争いの種に

 そして、この動きは政治的な波及効果をもたらしています。日本の衆議院選挙では、減税を公約とする国民民主党が躍進しました。同様に、アメリカの大統領選挙でも、減税を訴えたトランプ氏が当選。名古屋市長選挙においても、地方レベルでの減税策を訴える候補者が圧勝しました。

 そしてもうひとつ、給付金は特定業種や人への利害に直結し、政府と民間の良くない関係づくりに寄与していないかという、国民の不信感も買いやすいのかもしれません。物価高で苦しむ人が多いなかで、新しい争いの種になっている可能性もありそうです。

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